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MARU。architecture 高野洋平+森田祥子/一級建築士事務所

WORKS。

東京藝術大学芸術未来研究場

東京藝術大学の「芸術未来研究場」は,人が生きる力であるアートを根幹に据え,人類と地球のあるべき姿を探求するために,さまざまなプレイヤーが集い,繋がり,社会に開かれたアートを実践し,未来を共につくっていく場である.2023年4月に組織され,全学横断的に企業・官公庁・他の教育研究機関との連携を強化し,社会のさまざまな領域におけるアートの新たな価値や役割を増やすプロジェクトを実践している.正門の正面にある大学本部棟の1 階部分を,東京藝術大学の顔となる空間として芸術未来研究場の拠点にすることがこの改修計画の目的である. イベントやワークショップ,打ち合わせ等が巻き起こる「生きた活動の展示の場」が求められた.そこで,フレキシブルでフラットな空間の中に,さりげなく活動のきっかけとなる環境のムラをつくることを考えた.また,国際子ども図書館との境界部から南門までを開き,複数のアプローチも同時につくっている.同大学は多岐にわたる分野で構成され、ふたつの学部間の交流や,他学科との協働が期待される. 全学横断を掲げる芸術未来研究場にふさわしい場とは何か.そこで,さまざまな創作活動に共通する素材としての「鉱物」に着目し、異なる粒度のマテリアルが同時に存在することで生まれる空間を目指した.川の中に大きな岩が溜まり水の流れの滞留が感じ取れるように,大きな粒度が滞留するところに人・モノが溜まる場が現れ,また異なる粒度の滞留は建物内外に繋がり,藝大内の,そしてまちへ広がるランドスケープを紡ぐきっかけになる. 建築ではスライスした石や砕石を建材として用いる. _彫刻は石や岩を彫って作品をつくる.日本画に使われる顔料は石を粉になるまで砕いたものである.その粒度はセメントと近似している.私たちはまったく異なる角度から石をそれぞれに利用している.粒度の異なる石が分野を横断していく手掛かりになると考えた. さまざまな方向からやってきては通り過ぎる人の流れを空間に描き,動きのある場所に細かな粒度,人びとがより滞留する場所に大きな粒度のマテリアルを配置していった.砂利を埋め込んだコンクリートの研ぎ出し,洗い出し,ポーラスコンクリート, _ 藝大の土で焼成したインターロッキング,スライスした庭石,庭石をそのまま埋め込んだコンクリートベンチまでがインテリアからランドスケープまでを横断する.庭石をスライスした際に出た石粉は鉄部や家具の塗装とした.粒度の粗密が空間にわずかなムラを与え,人びとの振る舞いに寄り添っている