NOW LOADING

MARU。architecture 高野洋平+森田祥子/一級建築士事務所

WORKS。

尾州ビレッジ

JR尾張一宮駅前に建つ小さな商業施設群です。

尾張一宮はその名の通り尾張国の一宮である真清田神社を中心としたまちで、かつては参道の商店街がそぞろ歩く参拝者で賑わったといいます。クライアントは、駅ビルに隣接した一等地が長い間駐車場としての活用に留まっていた状況を改善し、まちの賑わいに資することを望んでいました。そこで、イベント利用も可能な駐車場を一部残しつつ、駅前広場に面して公園のような場をつくり、まち歩きのきっかけの拠点とすることを考えました。

具体的には、100平米に満たない小さな建築群を、角度を振りながら配置し、その隙間に連続する庭と小径をつくりました。プランは風車型配置の耐震壁を外部側に張り出すことで、テナント専有部のフレキシビリティを高めると共に、フラッグを取り付けたり、人が滞留する拠り所としています。内部空間をつくると同時に、建築が建つことで生まれる外部空間をつくることを意図しました。

また、視線の抜ける透明な大きなガラス面と繊細な鉄骨フレームの重なりによって、内部から庭の緑、街の風景へと境界面が折り重なって連続していく空間を目指しました。地域の植生を中心としたローメンテナンスの植裁は、直線的な街路樹とは異なり、時間と共に都市との柔らかな共生を生むでしょう。

駅前は商業的不動産価値が高いために、とかく敷地一杯容積一杯にビルが建つ。その内側でどんな賑わいが生まれていてもまちからは感じとることは出来ず、結果的にまちの風景は寂れていきます。本計画では駅前遊休地の暫定利用という建付により事業性を担保しつつ、「容積を埋める箱」でなく「隙間をつくる」建築を目指しました。基礎を除く全ての接合部を乾式とし、将来的に解体して移設することも可能としています。もしこの建築が役割を終える時が来るとしたら、緑地や空地がある事の経済的価値を誰もが共有できるようになっていれば良いと考えています。